屋根や外壁のひび割れを見つけると、ホームセンターで買ったコーキング材で自分で塞ぎたくなる方は多いものです。しかし、その「良かれと思った補修」が、かえって雨漏りを悪化させてしまうことをご存じでしょうか。一級建築士の立場から、DIYコーキングに潜む落とし穴を忖度なくお話しします。
コーキングは「塞ぐ」道具ではなく「水を逃がす」設計の一部

多くの方が誤解しているのですが、屋根や外壁は「水が一滴も入らない箱」として作られているわけではありません。むしろ、入ってきた雨水を計画的に外へ排出する「水の通り道」として設計されています。屋根材の重なり部分、サッシ下部の水抜き穴、外壁の通気層の開口などは、わざと隙間を残してあるのです。
ここをコーキングで塞いでしまうと、本来逃げるはずだった水の出口がなくなります。結果として、雨水が壁の内部や屋根下地に溜まり、木材を腐らせたり、内部結露を起こしたりします。表面上は「ひび割れが消えてキレイになった」ように見えても、内部では確実に被害が進行している——これがDIYコーキングで最も多い失敗パターンです。
自分でやると失敗しやすい3つのポイント
仮に塞ぐべき場所であっても、施工そのものに技術が必要です。第一に「プライマー(下塗り材)の省略」。これを塗らずにコーキングを打つと密着せず、数か月で剥がれて隙間から水が侵入します。プロは必ず下地に合わせたプライマーを選びます。
第二に「古いコーキングの上への重ね打ち」。劣化した既存コーキングを撤去せず上から塗ると、土台ごと剥離してかえって大きな隙間を作ります。第三に「動く部分への固いコーキング充填」。建物は温度や地震で常に微妙に動いており、硬化後に伸縮しない材料を使うと、すぐにひび割れて元の木阿弥になります。材料の選定一つで結果が真逆になるのです。
「塞いではいけない場所」を塞ぐと雨漏りが始まる
特に危険なのが、本来開けておくべき開口を塞いでしまうケースです。サッシ枠の下端には小さな水抜き穴があり、ここを塞ぐと窓まわりに水が溜まります。スレート屋根の重なり部分(縁切り部)をコーキングで埋めると、毛細管現象で吸い上げられた水が抜けず、屋根裏へ回り込みます。外壁の通気層をふさげば湿気がこもり、内部結露とカビの温床になります。
つまり、素人目には「隙間=悪」に見えても、プロにとっては「必要な隙間」であることが少なくありません。原因を特定しないまま手当たり次第に塞ぐ行為は、家にとって最も危険な「善意の破壊」になりかねないのです。
それでも応急処置したい時の最低限のルール
台風直前などでどうしても自分で対処したい場合は、次の3点を守ってください。まず「原因が分からない隙間は塞がない」。次に「恒久補修ではなく、剥がせる防水テープで一時的に押さえる」。そして「落ち着いたら必ず専門家に状態を確認してもらう」。応急処置はあくまで時間稼ぎであり、根本解決ではないと割り切ることが大切です。
本間屋では一級建築士が非営利で屋根・外壁の相談に乗っています。業者の見積もりが適正か分からない、どこに頼めばいいか迷っている方は、お気軽にご相談ください。