「屋根の点検は自分でできますか?」とよく聞かれます。結論から言うと、点検の大半は屋根に登らなくてもできます。むしろ、素人が屋根に登るのは最も危険で、やってはいけない行為です。一級建築士の立場から、地上と屋内から安全にできるセルフ点検の手順をチェックリスト形式でお伝えします。
なぜ屋根に登ってはいけないのか

屋根からの転落事故は、毎年多くの死傷者を出しています。特に危険なのが、傾斜のある屋根です。乾いていても靴底が滑りやすく、コケや塗膜の劣化があればなおさらです。プロの職人でも命綱や足場を使うのは、それだけ危険だからです。
さらに問題なのは、素人が屋根に上がると点検のつもりが屋根材を割ってしまうことです。スレート(コロニアル)は経年で脆くなり、人が乗ると簡単にヒビが入ります。そのヒビが後の雨漏りの原因になれば、点検が損傷を生む本末転倒です。「点検は地上と屋内から」——これが大原則です。業者が「無料で屋根に上がって見ます」と言う場合も、勝手に割られて有償工事に誘導される手口があるため、立ち会いは必須です。
地上からできる点検チェックリスト
まずは家の周りを一周し、以下を確認してください。双眼鏡があると精度が上がります。
①軒先やベランダに屋根材の破片や粒(砂状のもの)が落ちていないか。スレートの表面が劣化すると細かい粒が落ちてきます。②雨樋のゆがみ・詰まり・外れ。落ち葉が溜まると雨水があふれ、外壁を伝って劣化を早めます。③外壁のひび割れやシミ、特に窓まわりやサッシ上部。④棟(屋根の頂上部)の板金が波打っていないか、めくれていないかを双眼鏡で確認。⑤アンテナの傾き。台風後にアンテナが傾いていれば、その根元の屋根材が傷んでいる可能性があります。写真をスマホのズームで撮っておくと、経年比較や業者への相談時に役立ちます。
屋内からできる点検チェックリスト
雨漏りは屋根表面より先に、屋内のサインで気づけることが多いものです。①天井や壁紙のシミ・変色・膨らみ。輪じみ状の跡は過去の雨漏りの痕跡です。②押し入れやクローゼットの奥のカビ臭。目に見える前に臭いで分かることがあります。③点検口があれば、懐中電灯で屋根裏の木材を確認し、濡れ跡・黒ずみ・カビがないか見ます。ただし屋根裏は足場が不安定なので、頭を入れて見る程度に留め、無理に奥へ進まないでください。④サッシまわりの結露との区別。冬場のシミは結露が原因のこともあるため、雨の翌日に濡れが増えるかで判断できます。
点検の頻度と、プロに相談すべきサイン
セルフ点検は、春と秋の年2回、そして台風や大雨・地震の後に行うのが理想です。日常の変化を自分で把握しておけば、業者の言う「今すぐ工事が必要」が本当か嘘か、自分で判断できるようになります。
一方で、天井のシミが広がっている、屋根材の破片が明らかに増えた、棟板金が浮いている——こうしたサインが見つかったら、それはセルフ点検の限界です。無理に自分で登ったり応急処置をせず、専門家に見てもらってください。放置すると下地の木材や断熱材まで傷み、修理費が数倍に膨らみます。
まとめ
屋根の点検は、登らずとも地上と屋内から十分にできます。むしろ登らないことが、あなたの安全と屋根の寿命の両方を守ります。年2回と災害後のセルフチェックを習慣にすれば、業者任せにせず自分で状態を判断できるようになります。
本間屋では一級建築士が非営利で屋根・外壁の相談に乗っています。業者の見積もりが適正か分からない、どこに頼めばいいか迷っている方は、お気軽にご相談ください。